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三陸の緑は深かった。

以前から函館や佐賀の料理学会 に視察に来られていた岩手県が、三陸ガストロノミー会議を宮古市で行うということで聞きに行きました。札幌〜いわて花巻はJAL便一択、そこから盛岡駅〜宮古市へ。盛岡から宮古は山田線沿いに車に乗せて頂いて、梅雨直前の緑の深さに目が洗われるよう!

今回の目的は研究者の発表でした。なぜおいしくなるのか、どの側面を味わえばさらに面白いのかがそこにあります。

後藤 友明さん(岩手大学三陸海洋研究センター准教授)による世界三大漁場の中での三陸の独自性について、
石川 豊さん(東北大学農学博士)による三陸・田野畑ワカメの世界唯一の特性について。聞きに来た甲斐がありました。
収録は仕事がひと段落したらやりますか、狼ナントカにならないようにw

三陸ガストロノミー会議(シェフたちのビデオメッセージ付き)
https://gastronomy-sanriku.com/kaigi/

もうひとつ素敵だったのは食材キャラバンです。県庁と地元シェフたちが人と情報できっちりアテンドし、生産者と世界レベルの交流を行ったようすは事前にムービーで記録されて披露されていました。

函館はどうでしょう。初期は心あるお役人の手も借りながらやっていましたが、今はゲストシェフたちもわざわざ来るのだからと、それぞれ情報源をもって動いて下さっています。初期のボランティアで、やりかたは経験し見聞きさせてもらいました。

キャラバン成功の力点は、実需が現場に行き、生産者や加工者に会うことです。その風景や匂いを感じて、その人のファンになれば、各地の良いものを差し置いてでも買い支えたくなり、価値を理解するほどに使い手のインスピレーションは尽きません。

リンゴ農家はリンゴのブランディングを振りかぶるのもいいのですが、すぐにコツコツできるのは果樹園や果樹園主のファンづくりです。岩手は復興支援の区切りがつく前に、先々への種まきをされたのだと思います。タンカー事故で海を汚された経験のあるガリシアからきたa Tafona de Lucia Freitasのルシア・フレイタスさんは、この地に何度も足を運んで状況を感じ取り、「三陸の困難とは比べられないけれど」と、自分たちの海の復活のため、漁師や街の人や料理人がしたことを語りかけました。海の仕事、食の仕事の人が体温を持って語る言葉は届いたでしょうか。彼女は既に岩手で小さな食事会を行った、今後もコラボしたいと壇上で発言するなど、函館で見た時よりさらに速く強い姿に圧倒されました。他のシェフたちの発表もそれぞれ自らのテーマ性をキャラバンに重ねて語る内容でした。三陸のファンになったのは彼女だけではなく、つまりキャラバンの効果は絶大です。

県の担当者は多忙なシェフたちと初めての体験をする生産者や窓口町村の板挟みじゃないかと想像すると同時に、それがスーパー役人を育てるとも感じました。同時に、自分たちの郷里が外から評価されることは、きっと食のプレイヤーの、その周りの人々の、勇気とアイデアにもつながります。
現地を踏み、人に会って味わうこと。それが料理人にパワーを与えお客に伝える、目に見えない永久機関なのです。

2018年4月【世界料理学会 in HAKODATE】でのルシア フレイタス シェフ

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