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4haの赤ルバーブ

アド・ワン・ファームは、有限会社アド・ワン(北海道札幌市)の農業部門。主力作物は水耕サラダ菜で、親会社アド・ワン社が大手SMなどへ販売する。ファーム社の道内3農場のうち、ルバーブは長沼農場で栽培されている。2021年現在、友人のオーヤさんがここに籍をおいている縁でルバーブをご紹介し、それで畑を案内してくれることになった(品質はとてもいいが、量がハンパない)。これをロケハン友達のモリヒラさん(農業の未来研究所)と彼女のお客様やお仲間が、食のプロならではのアンチフードロス精神で仕入れ、またご紹介して下さった。その方々へ感謝を込めて、産地レポートします。

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赤い有機ルバーブの圃場があるのは長沼町。直売所や野菜レストランやカフェなどが多く、札幌民には格好のドライブ先だ。昔は治水に苦労したと聞くけれど、河原の湿地帯を復活させたら、なんとタンチョウが戻ってきて子育てを始めて話題に。農業は米、そば、果樹、近郊野菜、花卉(かき)が盛んで、どぶろく特区。フーディーにとっては、CSAや直販で営む自然派農家が多い町。移住者たちがアートやスモールビジネスでまちに息を吹き込むちょっとポップな一面もあって、この一帯はとても魅力的だ。

長沼町は馬追(マオイ)丘陵と運河のある田園。千歳空港からも札幌からも車で30〜40分

 

十分太ったルバーブの収穫は5月中旬からと聞いていたが、今年はやや遅れ気味。

5月22日、水が張られた田んぼを抜けると、巨大な緑の一枚畑が出現。4.1haのうち、実はまだ植わっていない部分のほうが広い。「これ全部ルバーブ…?」と若干引いていると、ちょうど國田文雄場長が車で来られた。國田さんはご自分の農場を手放してリタイアしたものの、やっぱり畑がいい!ということでアドンワンファーム長沼農場の仕事をしているそうだ。「ルバーブ、食べてますか?」モリヒラさんの質問に、國田さんは満面の笑みで「お〜、毎日食うよ。ぶつ切りを砂糖で煮て、ヨーグルトにかけたりパンに塗るんだ」。「ジャムは奥さんが?」と聞くと「いや、これは俺がつくる(ニッコリ)」。まぁ〜、おしゃれッスね!

「自分の作物をどう食べていますか」というのは、農家との会話の糸口になる。ベテラン農家の国田さんは、ご自分が任された見知らぬ野菜をすぐに食卓に取り入れて楽しんでいる。そんな人が栽培してくれると思うと、なんだかちょっと嬉しい。

今植わっているのは約900株。長い畝の間はスギナひとつない黒土。昨年有機JAS認証とASIAGAPが取れているから、除草剤は使わずカルチベータと手除草で、ここまでやっているのは国田さんの几帳面さの表れだ。この日もスタッフさん2人が遠くで作業をしていた。5畝くらいごとに小型機械が入れるレーンをはさんでいて、それ以外の土は靴が沈むほどふかふか。その上、長沼は米どころで、水がいい。茎を食べる野菜であるルバーブのアクの少なさからも、それがよくわかる。

 

シベリア生まれの生命力を感じる花茎。この時期、摘んでも次々出てくるから大変。

この畑はまだルバーブを植えて3年ほど。背の高い畝は3年目、小さいのは1〜2年目。もとはUS産の種子から育て、今は株分けも試しながら両方で急ピッチに増やしている。多年草のルバーブは一般には6年くらい保つらしいけれど、いつ倒すかは収量との兼ね合いだ。そして長沼は雪が多い。冬ごしらえは何かするの?と聞くと國田さん、「な〜んもしないよ。上(土の上に出ている茎葉)を刈って漉き込むのさ」と言っていた。そこは機械で一気にやるらしい。「だってシベリア原産なんだもの」。確かにルバーブは、樹勢(草だけどね)も強い。スタッフさんたちは、その元気が花茎にいかないよう摘み取っている。

「ルバーブは病気もほとんどなくて元気だね〜」

 

「抜いてみるかい?」はい、ぜひ。 普段は刈るのだけど、手で長いまま採るのはポキッと折れたりして意外に難しい。國田さんの模範演技を見ると、茎の出た方向へ少し斜めに引っ張るらしい。

慣れるとハカマごとスッポン!と気持ちよく抜ける。オーヤさんもカタルシス。

 

モリヒラさんありがとう。お友達も、いつかぜひ!

國田さん、この赤ルバーブの旬はいつ?「涼しくなってくるとなんとなく赤黒くなる気がするな」とのことで、8月末までは最高のフレッシュが手に入りそう。通年供給を目指して洗浄〜カット〜冷凍ができる自社加工場も完成間近。他にもペースト加工や、姿のまま色と香りを保つレアフル加工、パウダーにも挑戦中だそうで、いずれ工場見学もできそうです。

5月下旬〜8月末は特に、太い、赤い、おいしいの3拍子。

「で、オーヤさん。どのくらい作るんですって?」「ん〜、全部植えたらざっと4-5トンかな?」
……ということで皆さま、北海道産の有機赤ルバーブが足りなくなることは、当分なさそうです(^_^;)
長沼町へも、いずれどうぞお越しください。

以上、現場からでした。

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