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お店で売っていない作物

レストランやパティスリーで食材の話になるとよく、「何か面白い素材ありますか?」と聞かれる。で、つい「〇〇がよかったですよ」なんて言うと、こんなホンネがこぼれることがある。

 

「いいけど…でもお客様が知らないものって、作ったあと売るの大変なんだよね〜」


なぁんだ、と思うけど、確かに一理ある。
もしケーキを買いに行って、味も形も知らない果物がのったお菓子といちごショートが並んでたら、勝負は見えている。

今思えば、ルバーブやシーベリー、フルーツほおずきも、最初は不思議な目で見られ、農家さんから「どこか売り先ない?」とよく聞かれる存在だった。これ全て「スーパーで見かけない果菜たち」。だから使い手が思い切って使えない、または気づいていない。イチゴやモモなら食べ手にもなじみがあるから説明はいらない。でも買って食べる機会のない食材は、それなあに?どんな味?おいしいの?から説明しなければならない。選んでもらうには、まず覚えてもらうことだ。だからパティシエさんは枝付きや鉢植えをお店に飾ったり、料理人さんはプレゼンテーションしたり、それぞれ工夫をしている。生活者に伝えなけりゃ売れない、となれば、輸入フルーツならメディア費惜しまず広告打つだろうけど、国産フルーツにそんな予算はなさそうで、口コミと商品、売場の表現力、あるのみ。こうして今ある作物が広まるまでにも、きっと売り手や使い手の陰の苦心が色々あったんだろうな。

世界の主要作物、トマトだって、200年も前は似たような冷遇を受けてきた。
南米から欧州へ伝わり、北米へ。アメリカでは19世紀初めにまだ、毒があるかも…などと言われたそうだ。まるで伝統野菜みたいに料理に使われているけれど、かなり新しい食材だ。

日本で北海道を見ると「新しい…豪快だけど荒削り」と言われたり、実際そうだったりするけれど、大丈夫、世界は常に変わっているし、価値観も変わるし、気候も変動する(これはいいことじゃないけど、本音を言えば冬が過ごしやすくなってきたのはありがたい)。

今、私が気になっているのは道総研林業試験場の錦織正智さんに会いに連れていってもらったツルコケモモ、モリイチゴ、それから最近覚えたノリウツギ。モリイチゴについては来月マイナビ農業「そこにあるもの モリイチゴの再発見」が掲載される(後追い記事はブログで書くつもりだ)。


ノリウツギは山で白いがくが目立つ中背のアジサイ科の木で、越前和紙の紙漉きのつなぎに必須らしい。和紙の木の繊維をつなぐのはトロロアオイでは?と思って調べたら、さらに古くから使われたのがノリウツギで、紙漉きの工程中での働きも違うのだそう。ということは……修復などに必要なのでは⁈ 山で採取できるとはいえ、こんな植物を植えたらどんなに役に立って楽しいだろう。夢が膨らむな〜。

私の植物栽培はまだ妄想だけど、新旧取り入れて、本当によいものを見つけていかないとね。

マイナビ農業には他にも素晴らしい農家さんの記事を書かせてもらっている。
よかったら読んでもらえると嬉しいです。

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